どぶろぐ。

ツルヱさん

今日の文章は、何の面白みもない、
長いだけの自己満足文章になるでしょう。

面白みがないどころか、
弱っている人にはダメージを与えてしまうかもしれません。

また、それらは、私が感じたことを
素直に文章化しているだけであって、
特定の宗教を薦めたり、まして非難する意図は全くありません。

こと宗教に関して私は、
実家は多分仏教だけど、クリスマスも楽しむし、
結婚式は教会で挙げちゃった、
という程度の無節操な人間ですので、
間違った解釈があったとしても、
物を知らない馬鹿なヤツだと、憐れむ程度でお願いします。




ツルヱさんは私の母の叔母、つまり私の大叔母にあたる人だ。

私の知っているツルヱさんは、身体は小さいが、生気に満ちていて、
愛嬌のあるクリクリとした瞳を輝かせ、いつもニコニコ、
さっぱりとした裏表のない性格で、誰からも慕われていた。

将来を約束した人がいたらしいが、その人とは戦争で別れ別れになって、
結局、誰とも結婚しなかった、と聞いている。

彼女は敬虔なキリスト教徒で、80歳を過ぎても、
自転車に乗って、教会へ通う元気なお年寄りだ。

敬虔だからと言って、別に親戚に対して改宗を勧めることもしないし、
まして、壷なんかを売りに来たりはしない。
ただ、自分の信じる教えに従って素直に生きてきた。

そんなツルヱさんは、その日も自転車に乗っていたが、
運悪く、転んでしまった。

足は痛かったけど、病院が嫌いで、放置していたら、
とうとう、立つことも出来なくなり、
ようやく診察を受けた時にはもう手遅れだったらしい。

つま先へ血が巡らなくなり、壊疽の症状が出ていて、
片足のひざから下を切断した。

手術を受けた当初は、やはり落ち込んだものの、
しばらくすると、見る見る回復していった。

ツルヱさんはとても溌剌としていて、
お肌もツヤツヤで、どう見ても80歳を超えている様には見えなかった。
そうだなぁ、髪を染めたらきっと健康な60台に見える、片足がない以外は。

だけど、入院生活というのは、単調で何の刺激もないのだろう、
徐々に認知症が進行していく。排泄がわからなくなる。

持病だった腸閉塞の症状が出て、容態が急変。
半月ほど集中治療室に入るが、2年半の療養生活に終わりを告げた。

2006年8月6日午後7時7分、永眠。 享年83歳。


8月6日。丁度その日、私はこれを読んで、
戦争や人の死というものを少しだけ考えていた。
ほんのわずか、つぶやくような言葉が、こんなにも人の心をつき動かす。
俳句を読んで涙を流したのは、たぶん初めてのことだと思う。

いつもすぐに忘れてしまう「自分はこんなにも幸せだ」ということを思い出していた。
そして、戦争によって、大きく運命を変えられた人が、
どれほどたくさん、居られるだろうと考えた。

ツルヱさんの訃報を聞いたのは7日の朝だった。

過ぎ去ったことに、仮定を用いるのはあまり好きではないけれど、
もし、戦争がなかったら、もし、恋人と別れずに済んだら、
身近に家族が居たら・・・足を切らなくてもよかったかもしれない、
入院せずに済んだかもしれない・・・、と考えずにはいられなかった。

夕方ごろに、教会までの地図がFAXで送られてきた時、私は驚いた。
以前、私が勤めていた会社のお得意様に、キリスト教の法人があったのだが、
その法人の敷地に併設された教会だったのだ。
あとで聞くと、その館長さんとツルヱさんは、60年来の親友であった。
「縁がある」ってこういうことを言うのだろうか。

私はツルヱさんのお友達の名刺を作っていたのかぁ。
もっと、早くこのことを知っていたら、
もっとたくさんツルヱさんとお話ができたのに、と
自分の鈍さに、ちょっと腹が立った。

ツルヱさんが家族を持たないままに亡くなったのは、
戦争のせいだと思いかけていたが、
8日の前夜式、9日の告別式を経て、私の考えにも少し変化が訪れる。

牧師さんや、教会の方々が、まるで親族のようにツルヱさんの想い出を語る。
「まるで」ではないのかな、彼らはお互いの敬称(?)に「兄(けい)」、「姉(し)」
と呼んでいたし、「息子のように」というような表現もしていた。

血と同じくらい、思想の絆は強いのかもしれない。
そして、おそらくツルヱさんがキリスト教を信仰するに至った経緯には
戦争が大きく影響している。戦争があったから、彼女は多くの家族に巡り合った。


牧師さんが言うには、集中治療室で、意識も朦朧としながらも、
ツルヱさんは神様にお祈りをささげていたという。

ICUに入ることは本来、親族にしか許可されない。
牧師さんは看病に疲れた親族に頼み込み、許可を貰ったらしい。
親族だってツルヱさんが喜ぶなら、と許可を出したのだ。
だけどそれって、ちょっとやりすぎな気がした。
ゆるぎない瞳で、「なぜ、私がツルヱさんに会えないのか理解できなかった。」
と語った時には、正直ちょっと引いた。

おっと、話を戻そう。

「神様、神様。」とツルヱさんが訴えるので、
看護士さんが口元に水を持っていくと、
「神よ、感謝します。」と言ったそうだ。

本当に神様が居るのか、それはどんなものなのか、
私には全然わからないけれど、
そのとき、きっと神様はツルヱさんのそばにいたのだろう。

ツルヱさんが、幸せであったと信じて、心からご冥福をお祈りします。
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by hakoiri_musume | 2006-08-10 02:00 | どびんのひとりごと

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